Exodus of Kampo

漢方薬の代替医療からの脱出

アルツハイマー型認知症患者の認知機能に及ぼす帰脾湯エキス顆粒の効果

 

DOI: 10.1111/j.1447-0594.2007.00407.x

www.semanticscholar.org

【目的】近年では帰脾湯などの漢方薬が高齢のアルツハイマー病患者の認知機能を改善させる可能性が示唆されている。帰脾湯の構成生薬である遠志は、培養神経細胞のコリンアセチルトランスフェラーゼ活性を増強させることからその有用性が示唆される。本研究の目的は、遠志含有漢方製剤である帰脾湯の老人性認知症患者に対する安全性と有用性の検討である。

【方法】精神障害の診断と統計マニュアル(DSM)第4版に基づき診断されたアルツハイマー型老人性認知症患者75例(84.4±6.4歳)を無作為に非投与群、牛車腎気丸(対照群)または帰脾湯群に割り当てた。各薬剤は1日3回、3ヶ月間投与した。

【結果】いずれの群においても重篤な有害事象は認められなかった。治療前後のミニメンタルステート検査(MMSE)、日常生活動作(ADL)および脳血管単一光子放射断層撮影(SPECT)を評価した。MMSEスコアは帰脾湯群で有意な改善が見られた(+1.65±0.53)が、非治療群(-0.3±0.67)および牛車腎気丸群(-0.58±0.49)で有意な改善は認められなかった。全群でADLスコアに変化は認められなかった。帰脾湯と脳血流量増加に関連性は見られなかった。

【結論】これらの結果から、アルツハイマー型老人性認知症患者の治療に帰脾湯が有用である可能性があることを示唆しているが、帰脾湯の認知能改善メカニズムを明らかにするためには更なる検討が必要である。

Impact Factor: 2.656