Exodus of Kampo

漢方薬の代替医療からの脱出

多嚢胞性卵巣症候群患者の内分泌状態及び排卵誘発に対する八綱弁証に基づき選択された漢方薬から温経湯への切り替え効果

 

DOI: 10.1142/S0192415X06003746

www.ncbi.nlm.nih.gov

本研究は多嚢胞性卵巣症候群PCOS)患者の内分泌及び排卵誘発に対する、これまで処方されていた漢方薬から温経湯の切り替え効果の検討であった。PCOSと診断された無排卵患者64例を本研究に登録した。患者は漢方診断後に八綱弁証並びに気血水理論によって選ばれた漢方製剤(当帰芍薬散23例、桂枝茯苓丸21例)に割り当てた。8週間の治療で排卵が見られなかった患者54例をこれまでの漢方処方の継続群(継続群、n=27)または温経湯への切り替え群(切替群、n=27)に無作為に割り当てた。これまで処方されていた漢方薬による8週間の治療前後の血漿FSH、LHおよびエストラジオールレベルの測定並びに排卵率を評価し、またその後同一処方あるいは温経湯による治療8週後の評価を行った。漢方製剤治療患者64例中排卵しなかった54例において、平均血漿LHの低下は認められなかった。当帰芍薬散並びに桂枝茯苓丸から温経湯に切り替え、温経湯投与8週後の血漿LHレベルはそれぞれ58.2%(p<0.0001)と49.4%(p=0.0005)であった。当帰芍薬散から温経湯切替群の血漿エストラジオールは増加傾向が見られ(1.51倍、p=0.055)、桂枝茯苓丸から温経湯切替群(p=0.032)より有意であった。温経湯切替群の排卵率(59.3%)は継続群(7.4%)より有意に高かった(p=0.036)。本研究では八綱弁証を考慮せずに、温経湯がPCOS患者の排卵障害における内分泌の改善に有効であることが確認された。本研究結果から、温経湯は様々な体質(八綱弁証理論に基づく)のPCOS患者の治療に適した薬剤であり、幅広い治療スペクトラムを有する可能性が示唆される。

Impact Factor: 3.12