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漢方薬の代替医療からの脱出

認知症患者における行動と心理症状ならびに日常生活動作の改善に関する抑肝散の無作為化、観察者盲検対照試験

 

doi.org

【目的】無作為化、観察者盲検対照試験において認知症の行動と心理症状(BPSD)ならびに日常生活動作(ADL)の改善に関する漢方薬抑肝散の有効性及び安全性を検討した。

【方法】DSM-IV基準による軽度~重度認知症患者52例(男性24例、女性28例、平均±標準偏差年齢;80.3±9.0 歳)を対象とした。登録患者を抑肝散群(N=27)と対照(非投与)群(N=25)のいずれかに無作為に割り付け、4週間治療を行った。治療開始時及び治療終了時にBPSD評価に関しては神経精神症状評価尺度(NPI)を、認知機能に関しては簡易精神状態検査(MMSE)を、ADLに関してはバーセルインデックスを実施した。また錘体外路症状(EPS)及びその他の有害事象の発生頻度を記録した。治療1週間後にコントロールが不十分な場合には、ドパミンD1選択性神経遮断薬塩酸チアプリドを治療に加えた。試験は2004年1月から3月の間で実施した。

【結果】両群の全登録患者が試験を完了した。対照群の11例が塩酸チアプリドの投与を必要とした。抑肝散群においてNPIスコア(平均±標準偏差;37.9±16.1 から19.5±15.6)とバーセルインデックス(平均±標準偏差;56.4±34.2 から62.9±35.2)が有意に改善したが、対照群では改善は認められなかった。MMSE の結果は両群とも変化がなかった。EPSはいずれの群でも認められなかったが、めまい及び異常身体動揺が塩酸チアプリドの投与を受けた患者6例で認められた。

【結論】抑肝散はBPSD及びADLを改善した。フォローアップ試験として二重盲検プラセボ対照試験を実施することが望まれる。

Impact Factor: 4.247 PMID: 15705012