Exodus of Kampo

漢方薬の代替医療からの脱出

認知症の行動・心理症状に用いる抑肝散が健常人の薬物代謝酵素活性に及ぼす影響

 

doi.org

世界的にも生薬製剤と医療用医薬品の併用は増加しつつある。したがって生薬製剤と医療用医薬品の相互作用は、臨床的に重要な問題となっている。認知症の行動・心理症状の治療に効果的な漢方薬の抑肝散は、最も使用されている生薬製剤の1つである。我々は健常人を対象に抑肝散の薬剤代謝活性を検討した。喫煙歴のない健常人の日本人男性26例(22.7±2.3歳)による非盲検反復投与試験を行った。抑肝散投与(2.5g、1日2回を1週間)前と投与終了後に、カフェイン150mgとデキストロメトルファン30mgを投与し、8時間後に採尿した。チトクロームP450(CYP)1A2、CYP2D6、CYP3A、キサンチンオキシダーゼ(XO)、N-アセチルトランスフェラーゼ2(NAT2)をカフェインとデキストロメトルファンの尿中代謝指数に基づき評価し、尿中6βハイドロキシコルチゾール/コルチゾール比も評価した。7日間に渡る抑肝散投与前後において、上記の酵素活性の統計的な有意差はみられなかった。本研究で得られた結果を検証するには、今後薬剤代謝活性酵素基質の薬物動態と薬力学に対する抑肝散の影響を評価する試験が求められるものの、CYP1A2、CYP2D6、CYP3A、XO、NAT2によって主に代謝される併用薬剤において薬物動態学的な相互作用が発生することは考えにくい。

Impact Factor: 1.694 PMID: 27582327