Exodus of Kampo

漢方薬の代替医療からの脱出

クローン病患者における大建中湯投与による血中アドレノメデュリン濃度上昇作用

 

dx.doi.org

大建中湯は消化管症状の治療に広く用いられている漢方薬である。大建中湯が血中アドレノメデュリン(ADM)濃度に及ぼす作用メカニズムは興味深いものがある。更に、ヒトのクローン病治療における大建中湯の効果は明確にされていない。本研究の主要評価項目は、活動期クローン病患者の血中ADM濃度に対する大建中湯の効果の検証である。副次評価項目は、疾患活動性に対する薬剤の影響と副作用発現の可能性評価になる。非盲検試験で、活動期クローン病患者10例に対し大建中湯 15.0g/日を8週間連続投与した。その間、既存の抗炎症療法は継続とした。投与前後に、総ADM(t-ADM)と成熟型ADM(m-ADM)の血漿濃度を酵素結合免疫吸着法を用いて測定した。治療に対する患者の反応は、IOIBDスコア(炎症性腸疾患研究の国際機関により提唱された活動評価項目)を使用して、臨床的に評価した。血漿t-ADM濃度(16.4±1.1 vs. 20.2±1.7 fmol/mL、P=0.0218)および血漿m-ADM濃度(1.7±0.1 vs. 2.2±0.1 fmol/mL、P=0.0284)は、TU-100の8週投与に伴い対照群と比較して有意に増加した。IOIBDスコアも改善し、0週目3.9±0.5から8週後2.4±0.4と有意に減少した(P=0.0284)。IOIBDスコアの10評価項目のうち腹痛や腹部圧痛は、有意に低下した(P=0.014、P=0.046)。従って、本研究の対象症例については、大建中湯は、安全かつよい忍容性が示された。本研究結果から、大建中湯の薬理学的作用は血中ADM濃度の変化と関連し、クローン病管理に役立つものであると考えられる。今回の期待できる結果により今後更に大規模かつ多施設での試験が進められるであろう。

Impact Factor: 1.922 PMID: 27432470