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漢方薬の代替医療からの脱出

高齢認知症患者の食欲不振に対する六君子湯の効果:予備的研究

DOI: 10.1111/j.1479-8301.2010.00347.x

www.ncbi.nlm.nih.gov

【背景】機能性胃腸症状は高齢の認知症患者においてしばしばみられるものである。 このような場合、抗うつ薬や第2世代の抗精神病薬が投与される。しかしながら、これらの薬剤は副作用のリスクがある。本研究においては、食欲不振の高齢の認知症患者に六君子湯を投与し、食物摂取への影響を検討した。

【方法】6名の高齢認知症患者を入院患者の中から選抜した。この患者らは、食欲は喪失しているが、胃腸臓器の器質的な異常は呈していない。これらの患者に六君子湯 7.5gを1日3回、4週間投与した。検討した項目は、六君子湯投与前、投与4週目の食物摂取量、体重、血漿中の総蛋白、アルブミンカリウムである。統計分析は、4週間の間に摂取された食物の割合をANOVAで解析した。また、六君子湯の副作用についても検討した。

【結果】1名の患者において、胆のう炎の発生のため、投与3週目に検討を中止した。その患者の4週目の値は、他の5名の患者の4週目の値の平均値を用いた。ANOVAとTukeyで多重比較を行ったところ、六君子湯4週間投与の前後で、体重において、わずかではあるが有意な差を認めた。食物摂取の変化においては、六君子湯は、投与前と投与1日目、1日目と2日目、2日目と3日目、3日目と1週間目、1週間目と2週間目の各々の間では有意な差は認められなかった。しかし、他のタイミング間では、食物摂取量は有意に増加していた。副作用に関しては、軽度な下肢の浮腫が2名の患者で認められた。

【結論】本研究では、高齢の認知症患者において六君子湯の食欲不振改善作用が認められた。本研究は、重篤な副作用もなく、六君子湯は高齢の認知症患者の機能的食欲不振の改善に有用であることを示している。

Impact Factor: 1.209