Exodus of Kampo

漢方薬の代替医療からの脱出

ヒトにおける包括的転写解析による当帰芍薬散の薬理学的効果に関する検討

doi.org

 

当帰芍薬散は、冷え症、むくみ、月経不順などに用いられる漢方薬である。本研究では、当帰芍薬散の効果を薬理学的に解明することを目的に、cDNAマイクロアレイを使った網羅的遺伝子発現解析により、服用で発現変動する遺伝子を探索した。上記3症状を持つ24名の女性に当帰芍薬散を4週間服用してもらい、その前後で末梢血の採取を行った。解析の結果、953の遺伝子が有意に発現増加し1,067の遺伝子が有意に発現減少した(Student t 検定によるp値< 0.05、FDR < 0.05)。有意に発現変動した遺伝子を把握するために、新規なヒト遺伝子のジーン・オントロジー(GO)データベースを構築して、任意の遺伝子セットに含まれる機能遺伝子数を、ヒト・ゲノム上の対応する機能遺伝子数と比較し、遺伝子濃縮率の有意性を検証できるソフトウエアー・ツール、"KNApSAcK human gene classifier" を開発した。有意に発現変動した遺伝子に対して、ソフトウエアー・ツールを用いた機能分類を行った結果、細胞周期と DNAプロセッシング、タンパク合成などに関わる遺伝子群が変動していたことが明らかになった。これらの中には、エストロゲンや腫瘍に関わる遺伝子も含まれており、なかでもエストロゲンに関わる遺伝子は、古来認められてきた当帰芍薬散の薬効に関連している可能性があると考えられた。