Exodus of Kampo

漢方薬の代替医療からの脱出

破傷風による筋痙攣に対する芍薬甘草湯の臨床経験

doi.org

【背景】破傷風はテタノスパスミンを産生するClostridium tetaniによる感染症である。重症破傷風の治療には鎮静薬や筋弛緩薬による集中治療が必要であるが、これらの薬剤の長期使用は集中治療後症候群(PICS)の発生に関連する。突発性筋痙攣に伴う疼痛の治療に広く臨床使用されている芍薬甘草湯は漢方薬の一つであり、破傷風による筋痙攣に有効であることを示した研究もある。本研究の目的は、破傷風患者の管理における芍薬甘草湯の有用性を鎮静剤の減量という観点から評価することである。

【方法】2006年1月から2022年12月までに破傷風と診断され、当院で治療を受けた患者を対象とした。患者を芍薬甘草湯を行った群と行わなかった群に分け、背景情報と臨床経過、特に鎮静薬の減量について両群間で比較した。

【結果】芍薬甘草湯を投与した破傷風患者は5例(芍薬甘草湯(+)群)、芍薬甘草湯を投与しなかった破傷風患者は2例(芍薬甘草湯(-)群)であった。集中治療室(ICU)に入院した7人の患者全員において、全身発作の管理のために挿管と機械的換気が必要であった。プロポフォールの投与は、芍薬甘草湯投与開始から平均8.6日(範囲:3~22日)後に中止できた。プロポフォールの投与量は、芍薬甘草湯を投与された患者の方が投与されなかった患者よりも少なかった;ミダゾラムフェンタニルも同様の傾向を示した。芍薬甘草湯投与群と非投与群のICU平均在室日数および入院平均日数はほぼ同等であった(ICU平均在室日数は芍薬甘草湯+群22.6日、芍薬甘草湯-群24.0日、入院平均日数は芍薬甘草湯+群35.2日、芍薬甘草湯-群36.0日)。7例全例が退院し、リハビリのために他院へ転院した。

【結論】芍薬甘草湯は破傷風患者の筋痙攣の管理に有用である。また、鎮静薬や鎮痛薬の使用を減らすことで、集中治療を必要とする破傷風患者のPICUの発生を予防できるかもしれない。

PMID: 37476111 PMCID: PMC10354374 Impact Factor: 1.2