Exodus of Kampo

漢方薬の代替医療からの脱出

八味地黄丸投与による軽度アルツハイマー病患者の血漿中代謝変化

doi.org

【背景】アルツハイマー病(AD)は、認知症の中で最も一般的な病態であり、衰弱させる進行性の神経変性である。アミノ酸は神経系において様々な生理的および病態生理学的役割を担っており、その合成レベルや合成に関連する障害は、ADの中核的特徴である認知障害と関連している。われわれが以前に行った多施設共同試験では、八味地黄丸がアセチルコリンエステラーゼ阻害薬(AChEI)のアジュバント効果を有し、軽度ADの女性患者の認知機能障害の悪化を遅らせることが示された。しかし、八味地黄丸が認知機能障害を改善する分子メカニズムについては不明な点が多い。

【目的】メタボローム解析により、血漿代謝物の変化から軽症ADに対する八味地黄丸の機序を解明する。

【方法】軽症AD患者67例を、AChEIに加えて八味地黄丸エキス7.5g/日を摂取する八味地黄丸群と、AChEIのみを投与する対照群に無作為に割り付けた(八味地黄丸群:33例、対照群:34例)。最初の薬剤投与前、3ヵ月後、6ヵ月後に血液サンプルを採取した。血漿サンプルの包括的なメタボローム解析は、最適化されたLC-MS/MSおよびGC-MS/MS法により行われた。WebベースのソフトウェアMetaboAnalyst 5.0を使用して部分最小二乗-判別分析(PLS-DA)を行い、同定された代謝物濃度の変化のダイナミクスを可視化して比較した。

【結果】女性参加者を対象としたPLS-DA分析のVIP(Variable Importance in Projection)スコアでは、八味地黄丸を6ヶ月間投与した後の血漿代謝物濃度は、対照群と比較して有意に高い増加を示した。単変量解析では、女性参加者のアスパラギン酸値は、対照群と比較して、八味地黄丸を6ヶ月間投与した後、ベースラインから有意に高い増加を示した。

【結論】アスパラギン酸は、本研究の女性八味地黄丸参加者と対照群参加者の違いに大きく寄与していた。いくつかの代謝物が、軽症ADに対する八味地黄丸の有効性のメカニズムに関係していることが示された。