Exodus of Kampo

漢方薬の代替医療からの脱出

抑肝散投与後に低カリウム血症を呈した精神科患者の特徴: 後ろ向き研究

DOI: 10.1002/pcn5.76

【目的】抑肝散は、認知症などの行動・心理症状の治療薬として精神科で使用されている漢方薬である。しかし、この薬に含まれるグリチルリチン酸が偽アルドステロン症や低カリウム血症を引き起こすことがある。我々は、抑肝散による低カリウム血症の危険因子を明らかにすることを目的とした。

【方法】過去に抑肝散の治療を受けた患者を対象に、レトロスペクティブ・コホート研究を実施した。各パラメータについて低カリウム血症群と非低カリウム血症群を比較し、危険因子を決定した。

【結果】本研究では、2009年4月から2019年3月までに抑肝散治療を受けた患者304例を対象とした。その結果、17.4%(n=53)の患者が抑肝散起因の低カリウム血症を経験していることがわかった。抑肝散関連低カリウム血症の患者とそうでない患者で有意差が検出された危険因子は、抑肝散投与前の血清カリウム濃度が低い、投与量が7.5g /日以上、および認知症であった。低アルブミン、低カリウム認知症では、低カリウム血症の発現が早かった。

【結論】低カリウム血症や認知症の患者に7.5g以上の抑肝散を投与する場合は,低カリウム血症の発現に注意する必要がある。特に低アルブミン、低カリウム認知症の患者には、抑肝散投与後早期にカリウム値を確認することが必要であることが示唆された。