Exodus of Kampo

漢方薬の代替医療からの脱出

加味帰脾湯が認知症の行動・心理症状を改善し、患者さんの好ましいポジティブ感情を高める

DOI: 10.1111/psyg.12962

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

【背景】認知症の行動・心理症状(BPSD)の管理は困難であり、介護者の負担につながり、その後、治療のために介護施設精神科病院へ転院することも少なくない。BPSDに伴う陰性感情の治療においては、好ましい陽性感情を引き出すことが重要な目標になるはずである。現在までのところ、抗精神病薬がポジティブ感情を改善することを示すデータはない。BPSDは、認知症患者の不安と関連することが知られている。加味帰脾湯は、日本では不安症の治療薬として正式に適応を持ち承認されている。

【方法】ここでは、アルツハイマー病(AD)患者のBPSDに対する加味帰脾湯の効果について、多施設共同無作為化観察者盲検比較試験を実施した。AD患者または脳血管障害を伴うAD患者を、加味帰脾湯治療群と漢方薬を投与しない対照群に無作為に分けた。BPSDはNeuropsychiatric Inventory Nursing Home Version(NPI-NH)を用いてスコア化し、好意的なポジティブ感情についてはDelightful Emotional Index(DEI)を用いてスコア化した。

【結果】合計63例(男性18例、女性45例、平均年齢:83.3±6.0歳)が研究に参加した。NPI-NHスコアの変化は、2群間で有意に異なっていた(一元配置分散分析、P<0.001)。治療群では、NPI-NHスコアがベースライン時の29.8±17.3からエンドポイント時の13.2±9.4へと有意に改善した(paired t-test, P<0.001)が、対照群では統計的に有意な変化は見られなかった。DEIスコアの変化は、両群間で有意に異なっていた。治療群では、DEIスコアがベースライン時の24.3±23.0からエンドポイント時の32.5±21.2へと有意に改善した(paired t-test, P=0.001)のに対し、コントロール群では統計的に有意な変化は見られなかった。

【結論】加味帰脾湯は、BPSDとポジティブ感情の両方を有意に改善した。

Impact Factor: 2.295