Exodus of Kampo

漢方薬の代替医療からの脱出

レム睡眠行動障害に対するクロナゼパムと比較した抑肝散の有効性:予備的後ろ向き研究

DOI: 10.1111/psyg.12563

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

【目的】レム睡眠行動障害(RBD)は、レム睡眠中の悪夢に伴う異常行動を特徴とし、レビー小体型認知症の前駆マーカーと考えられている。高齢者で最もよく見られるRBDは、一般的にベンゾジアゼピン系抗てんかん薬の長期作用薬であるクロナゼパム(CZP)で治療される。したがって、ベンゾジアゼピン特有の副作用を最小限に抑えるために、RBDの代替薬が緊急に必要である。漢方薬である抑肝散のRBDに対する有効性は、Shinnoらによって最初に報告された。ただし、抑肝散とCZPを比較した研究はない。したがって、この研究は、CZPの代替として抑肝散を使用する可能性を明らかにすることを目的としている。

【方法】これは、東京慈恵会医科大学付属病院で行われた遡及的コホート研究である。被験者は、国際睡眠障害分類第3版に基づいてRBDと診断された36例の外来患者から選択された。包含基準を満たしたが除外基準を満たさなかった23例のうち、11例が抑肝散単独療法で治療され、12例がCZP単独療法で治療された。主要評価項目は、日本版レム睡眠行動障害質問票(RBDQ-JP)の合計スコアであり、副次評価項目は、SF-8とRBDQ-JPの第1項目と第2項目のスコアとした。

【結果】平均合計RBDQ-JPスコアは、抑肝散(平均投与量:3.0g /日)での処理後に52.5から21.7(P=0.002)に有意に改善した。これは、CZP投与後の変化(43.8から21.3)と同様だった。RBDQ-JP第1項目(夢のコンテンツ)では、6項目中5項目の平均スコアが抑肝散投与後に有意に改善した。いずれかの薬物による治療後、SF-8に有意な変化はなかった。抑肝散で治療された患者のカリウム濃度は正常範囲内だった。

【結論】本結果は、少量の抑肝散がRBDのCZPに代わるものであり、顕著な有害事象はないことを示唆している。抑肝散の有効性と安全性をより詳細に前向きに明らかにするには、さらなる研究が必要である。

Impact factor: 1.518