Exodus of Kampo

漢方薬の代替医療からの脱出

選択的腹部外科手術施行中の患者における術後イレウスを軽減する大建中湯

DOI: 10.1002/14651858.CD012271.pub2www.ncbi.nlm.nih.gov

【背景】術後イレウスは、腹部手術を受ける人にとって重大な合併症である。 日本の漢方薬である大建中湯は、術後イレウスを軽減させる薬剤である。

【目的】選択的腹部手術施行患者の長期に渡る術後イレウス軽減に対する大建中湯の有効性と安全性の検討。

【方法】2017年7月3日に以下のデータベースを用いた検索を行った:CENTRAL、MEDLINE、Embase、医中誌、世界保健機構(WHO)国際臨床試験登録プラットフォーム(ICTRP)、EU Clinical Trials registry(EU-CTR)、UMIN臨床試験登録システム(UMIN-CTR)、ClinicalTrials.gov、日本東洋医学会(JSOM)、米国臨床腫瘍学会(ASCO)、米国消化器内視鏡外科学会(SAGES)。言語や出版日に対する制限は行わなかった。

【選択基準】選択的腹部手術を施行した18歳以上の成人患者で大建中湯と他の対象を用いた者を比較した無作為対照試験(RCT)を含めた。

【データ収集と解析】Cochraneが求める標準的な方法論的手順を適用した。レビューアーとなる筆者2名がそれぞれ文献検索を行い、データ抽出、そしてCochraneが提供するReview Manager 5を用いて研究のバイアスのリスクを独自に評価した。

【結果】患者1,202例を含む7本のRCTを対象とした。全体としてバイアスのリスクは4本の試験では低く、3本の試験では高いと判断した。大建中湯が術後から初回排ガスまでの時間(平均差(MD)-11.32時間、95%信頼区間(CI)-17.45〜-5.19、2本のRCT、対象者83例;極めて低品質のエビデンス)、または初回排便時間(MD-9.44時間、95%CI -22.22〜3.35、4本のRCT、対象者500例、極めて低品質のエビデンス)の短縮に寄与したかは不明である。術後から通常の固形食再開までの時間(MD 3.64時間、95%CI -24.45から31.74;2本のRCT、対象者258例;低品質のエビデンス)にはわずかあるいはほぼ差異は見られなかった。5本のRCTのいずれの群において、薬物関連の有害事象報告はなかった(リスク差(RD)0.00、95%CI -0.02〜0.02、対象者568例、低品質のエビデンス)。患者満足度に対する大建中湯の影響も不明である(MD 0.09、95%CI -0.19〜0.37;1本のRCT 、対象者81例;極めて低品質のエビデンス)。退院前の術後イレウスに対する再手術発生率(リスク比(RR)0.99、95%CI 0.06〜15.62、1本のRCT 、対象者207例、エビデンスの品質は中等度)及び入院期間(MD -0.49日、95%CI -1.21〜0.22;3本のRCT 、対象者292例、低品質のエビデンス)には、ほとんどまたは全く差が見られなかった。

【結論】メタ解析対象患者数が少ないため、選択的腹部手術患者の術後イレウスに対する大建中湯の軽減効果を現在の文献のエビデンスから明らかにすることは出来なかった。極めて品質の低いエビデンスとは、術後の排ガスまたは排便に対する大建中湯の改善作用が不明であることを意味する。今後大建中湯の有効性を評価するには、よりデザインされ適切な検出力を有する試験が求められる。

Impact Factor: 6.124 PMCID: PMC6494569