Exodus of Kampo

漢方薬の代替医療からの脱出

認知症患者への釣藤散対プラセボ:系統的レビューとメタ解析

DOI: 10.1111/psyg.12275www.ncbi.nlm.nih.gov

【背景】釣藤散は日本や中国で高血圧や頭痛に用いられてきた漢方薬である。複数の研究から、認知症に対する有用性が報告されている。本研究では成人の認知障害治療に対する釣藤散の有効性と忍容性の評価検討を行った。

【方法】認知症または軽度認知障害患者に対する釣藤散及びプラセボの無作為比較対照試験を検討した。

【結果】無作為比較試験3本、患者219例を対象とした。内訳は血管性認知症を対象とした試験2本、アルツハイマー認知症試験1本であった。短期二項選択法で判断すると、釣藤散とプラセボで改善に有意差は見られなかったが、連続アウトカム評価では釣藤散はプラセボと比較して、より認知機能の短期改善が見られた。脱落例から忍容性も認められた。ただし、結果は不正確かつ一貫性がなかった。信頼区間のバラツキI2(一次解析で72%)が大きいことからわかるように、解析患者数は小さく(一次解析 n=199)かつ不整合であった。

【結論】血管性認知症患者に対して、クオリティの低いエビデンスではあるが釣藤散の有効性が示唆された。しかし今回の結果は過大評価の可能性がある。より大きな母集団かつ長期に渡る試験の実施が求められる。その一方で良好な忍容性が認められたことから、釣藤散は血管性認知症患者に対する治療選択薬の1つとなりうる。

Impact Factor: 1.518