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漢方薬の代替医療からの脱出

治療抵抗性統合失調症治療における抑肝散の有効性と安全性:無作為化、二重盲検、プラセボ対照試験(陽性陰性症状評価尺度5領域モデルによる解析)

doi.org

【目的】抗精神病薬による治療がうまくいかない統合失調症患者をどう治療していくかは大きな課題であり、そうした治療抵抗性患者は全体の20-25%にあたると推定される。そこで、我々は、抑肝散の治療抵抗性統合失調症に対する有効性と安全性について検討を行った。

【方法】本ランダム化多施設二重盲検プラセボ対照比較試験の実施期間は2010年5月から2012年7月である。日本国内34病院精神科において抗精神病薬による治療中の120例が対象とされ、無作為に抑肝散7.5g/日またはプラセボを追加投与された。4週間の試験期間中、精神症状はPANSS(陽性陰性症状評価尺度)5領域モデル、興奮/攻撃因子(P4, P7, G8, G14)、抑うつ/不安因子(G1, G2, G3, G4, G6)、認知因子(P2, N5, N7, G5, G10, G11, G12, G13, G15)陽性因子(P1, P3, P5, P6, G9)、陰性因子(N1, N2, N3, N4, N6, G7, G16)を用い評価を行った。他にCGI-S(臨床全般重症度)、GAF(機能の全体的評価尺度)、DIEPSS(薬原性錐体外路症状評価尺度)を用い評価を行った。有効性に関する主要評価項目はPANSS 5領域スコアの変化とし、副次評価項目をCGI-Sスコアの変化とした。解析はLOCF法(同じ人を追跡調査している場合、前回の調査で得られた値を代入する)を用いたModified-ITT解析で行った。

【結果】プラセボ群と比較し、抑肝散群では治療抵抗性統合失調症患者のPANSS 5領域スコアが減少し改善傾向がみられたが、全体スコア、抑うつ/不安因子、認知因子、陽性因子、陰性因子においては統計的に有意とするには至らなかった。しかしながら、PANSS 興奮/攻撃因子においては、抑肝散群の方がプラセボ群に比較して有意な改善が認められた(p<0.05)。重篤な副作用の発現はみられなかった。

【結論】本研究により、抑肝散は治療抵抗性統合失調症、特に興奮/攻撃症状を改善することにより強力な補助治療の選択肢と成り得ることが示唆された。

Impact Factor: 3.222 PMID: 25954314 PMCID: PMC4411464

臨床試験登録番号: UMIN000005018