Exodus of Kampo

漢方薬の代替医療からの脱出

心腎症候群に対する防已黄耆湯の二重の有益性:予備的観察研究

 
【背景】心腎症候群(CRS)に対する従来治療は、しばしば薬剤抵抗性であり臨床的な成果が上がりにくい。本研究において、我々はCRSの従来治療に漢方薬である防已黄耆湯を加え、新たな治療法を探索することを目的とした。

【方法と結果】対象はCRS患者 26例〔内 男性18例、平均年齢77±8.4歳、平均血清BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)濃度241.5±196.6 pg/mL、平均eGFR(推算糸球体ろ過量)40.02±10.54mL/分/1.73㎡〕。防已黄耆湯投与は平均4.6±1.5g/日から開始し、3.5ヵ月後には平均5.2±1.2g/日、9.4ヵ月後には5.9±1.5g/日まで増量した。防已黄耆湯投与により、平均eGFRが3.5ヵ月後に44.60±10.76mL/分/1.73㎡(P=0.001)、9.4ヵ月後に45.93±11.57mL/分/1.73㎡(P=0.001)と有意に増加した。さらに、NYHA心機能分類は3.5ヵ月後(P=0.019)、9.4ヵ月後(P=0.019)とも有意に改善し、血清BNP濃度は3.5ヵ月後に195.5±145.7pg/mL(P=0.008)、9.4ヵ月後に163.3±130.2pg/mL(P=0.07)と有意に減少した。eGFRの増加とBNP濃度の減少の間に相関性は認めらなかった。これは、腎不全と心不全病態それぞれに異なる効果をあらわしたことを示唆するものである。

【結論】防已黄耆湯はCRSにおける腎不全と心不全病態両方に有益であることが示唆された。防已黄耆湯による漢方治療は、CRS患者で治療に難渋する場合の新たかつ有用な治療戦術になる可能性が示唆された。