Exodus of Kampo

漢方薬の代替医療からの脱出

全身倦怠感患者における十全大補湯によるナチュラルキラー細胞機能の変化

DOI: 10.1016/j.aimed.2019.12.003www.sciencedirect.com

【背景】身体的/精神的疲労は行動を変え、認知能力を低下させる可能性がある。健康な人でさえ、全身疲労はNK細胞の機能と関連している。十全大補湯は、全身疲労の治療に使用される漢方薬である。多くの動物モデルにおいて、十全大補湯は細胞傷害性Tリンパ球やNK細胞の活性などの免疫機能を強化する。本研究は、全身疲労の患者における十全大補湯の効果を調べた最初の臨床研究である。

【目的】全身疲労の患者の末梢NK細胞の数と機能が、十全大補湯投与によって変わるかどうかを研究した。

【方法】非盲検試験には、全身疲労(パフォーマンスステータス、PS 0~2) を有する10名の患者(男性2名、女性8名、年齢中央値36.5歳、29~46歳)が含まれた。対照群として6名の健康なボランティア(男性2名、女性4名、年齢中央値[範囲]:39[36-45]歳)が本試験に登録され、抽出前にインフォームドコンセントを実施した。すべての患者に連続28日間、1日に3回食前に十全大補湯を投与し、コンプライアンスと有害事象を評価するため、42日間の間、週2回評価した。主要評価項目は主観的な数値評価尺度とPSによって得られた疲労スコアで、副次的評価項目は、特定のリンパ球サブセットの表面受容体の発現に基づいた循環リンパ球に対する十全大補湯の影響である。

【結果】活性化マーカーの発現は、0日目から28日まで有意に増加し、42日後に減少した。抑制マーカーは、サイトカイン産生能の高いクラスターでアップレギュレーションされていたが、細胞毒性の高い画分ではダウンレギュレーションされていた。in vitroでのインターロイキン2刺激後に、機能的マーカーの発現の増加が観察された。

【結論】十全大補湯はNK細胞の細胞傷害活性を誘導する。NK細胞は、抑制機能を高めることでバランスの取れた状態を維持する。十全大補湯の経口投与は、NK細胞を活性化することにより免疫機能を改善する可能性がある。

CiteScore: 0.73 臨床試験登録番号:UMIN000021332