Exodus of Kampo

漢方薬の代替医療からの脱出

食道癌切除後の大建中湯の効果、非盲検無作為化比較試験

DOI: http://dx.doi.org/10.1007/s10388-017-0601-9link.springer.com

【目的】大建中湯は日本で広く使用されている漢方薬であり、腸管運動、腸管血流および抗炎症作用が知られている。本無作為化比較試験では、食道切除後の食道癌患者に対する大建中湯の有用性を検討した。

【方法】2011年3月から2013年8月に食道切除術を予定した食道がん患者40例を、同意が得られ手術予定日を決定した時点で次の2群に分けた:大建中湯(15g/日)投与群(n=20)および対照群(n=20)。主要評価項目は栄養状態、消化管機能の回復とした。副次評価項目は術後経過における血清C-反応性タンパク質(CRP)値およびアドレノメデュリン(ADM)値の変化、術後合併症の頻度および術後の入院期間とした。

【結果】大建中湯群の患者1例が術後に切除不能癌と判断されたため、患者39例を評価した。大建中湯群の平均年齢は、対照群より有意に高かった。術後21日目の体重減少率は大建中湯群で有意に抑制されていた(3.6% vs. 対照群:7.0%, p=0.014)が、血清アルブミンの推移に両群間で有意差はみられなかった。排ガスや排便などの消化管機能及び経口摂取の回復において有意な群間差は認められなかったが、大建中湯群では術後の消化器症状が少ない傾向にあった。手術後の入院期間に有意差は見られなかった。術後3日目の血清CRP値は大建中湯群で4.9mg/dl、対照群で6.9mg/dlであり、大建中湯群では抑制傾向を示した(p=0.126)。ADM値の増加率は術後に高い傾向がみられたが、両群間に有意差は認めらなかった。

【結論】大建中湯は食道癌切除後の消化管運動回復を促進し、体重減少を有意に抑制する効果を有しており、また手術に関連した過剰な炎症反応を抑制する可能性が示唆される。

Impact Factor: 2.061