Exodus of Kampo

漢方薬の代替医療からの脱出

大建中湯による高齢患者のCOPD増悪減少効果:後ろ向きコホート研究

 

doi.org

【目的】症候性COPD患者の治療には、長時間作用性ムスカリン受容体拮抗薬(LAMA)を含む吸入性気管支拡張薬の使用が推奨されている。しかし特に高齢COPD患者では抗コリン作用が消化管に悪影響を与えてしまう。大建中湯は、日本で最も処方される漢方薬であり、腹部膨満感や便秘の治療に多く用いられている。本研究は、高齢COPD患者における支持療法としての大建中湯の役割を検討した。

【方法】DPCデータベースを用いて、COPD増悪により入院した75歳以上の患者を特定した。次に1から4の傾向スコアマッチングを使用し、大建中湯投与または非投与患者のCOPD増悪または死亡に対する再入院のリスクを比較した。2群の比較にはCox比例ハザードモデルを使用した。LAMA療法を受けた患者と受けていない患者のサブグループ解析を行った。

【結果】大建中湯投与患者の再入院または退院後の死亡リスクは有意に低かった。 1から4の傾向スコアマッチングで、ハザード比(HR)は0.82(95%CI、0.67-0.99)であった。LAMA療法に対するサブグループ解析において、LAMA療法を受けた患者では再入院または死亡に対して有意差を示したが、LAMA療法を受けていない患者では有意差を示さなかった。

【結論】本研究から大建中湯は高齢COPD患者におけるLAMAへの忍容性を改善することで再入院またはCOPD増悪による死亡のリスクを減少させた可能性があることが示唆された。大建中湯は高齢COPD患者に対する有用な支持療法として推奨することが可能である。

Impact Factor: 3.274 PMID: 30643399 PMCID: PMC6311323