Exodus of Kampo

漢方薬の代替医療からの脱出

抑うつ傾向のある喫煙者を対象とした、抑肝散の効果に関する無作為化二重盲検プラセボ対照多施設共同試験

doi.org

【背景】喫煙とうつは密接に関連しており、悪循環を形成している。抑肝散は、怒りや苛立ちなどの神経精神症状を鎮める効果のあるポリハーブ治療薬である。抑うつ傾向はあるが、薬物療法を必要とする大うつ病性障害のない喫煙者を対象に、禁煙(SC)治療中の抑肝散の有効性を調べた。

【方法】2016年6月から2020年5月の間に、日本の国立病院機構の12の医療センターで、多施設、二重盲検、無作為化、プラセボ対照、並行群間比較試験が実施された。この試験は、最初にSC外来診療所を訪れ、精神科または心療内科で薬理学的治療を受けておらず、うつ性自己評価尺度(SDS)で 39点以上の喫煙者を対象とした。参加者(n=198)は抑肝散群またはプラセボ群のいずれかに無作為に割り当てられた。SC治療の開始とともに治験薬は開始され、12週間継続された。主要評価項目は、SC治療の高い成功率であり、副次評価項目には、SDSと感情プロフィール検査(POMS)のスコアの変化が含まれた。

【結果】SC治療の成功率は、プラセボ群(63%)と抑肝散群(67%)の間で同様だった(P= .649)。SDSスコア(プラセボ:平均差[MD] =-3.5、95%信頼区間[CI][-5.8, -1.2]、d=0.42;抑肝散:MD=-4.6、95%CI[-6.8, -2.3]、d=0.55)、および「緊張-不安」POMS サブスケールスコア(プラセボ:MD= -1.6、95%CI[-2.5, -0.7]、d=0.52;抑肝散:MD=-1.6、95%CI[-2.9, -0.3]、d=0.36)は、SC治療後に両群で有意な改善を示した。しかし、「抑うつ-落ち込み」は抑肝散群(MD=-1.9、95%CI[-3.1, -0.7]、d=0.44)で改善したが、プラセボ群(MD=-0.1、95%CI[-1.0, 0.7]、d=0.04)では改善しなかった。「疲労」の有意な改善は、抑肝散群(MD=-2.1、95%CI[-3.4, -0.9]、d=0.47)で認められたが、プラセボ群(MD=-0.5、95%CI[-1.8, 0.8]、d=0.11)では認められなかった。「抑うつ-落ち込み」の改善に対する時間×グループの交互作用は有意だった(P= .019)。

【結論】抑肝散は、SC治療の成功率を増加させないが、明らかな精神疾患のない抑うつ傾向のある喫煙者のSC治療により、心理状態に追加のプラスの効果をもたらす。

臨床試験登録ID:UMIN000027036。 2017年4月18日にUMINに遡及登録。

PMID: 36434692 Impact Factor: 2.838