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漢方薬の代替医療からの脱出

認知症の行動・心理症状に対する抑肝散の効果:無作為化比較試験の最新メタ解析

dx.doi.org

【背景】過去の臨床試験において、認知症患者の行動・心理症状(BPSD)に対する抑肝散の治療効果を確認した。

【目的】BPSD患者を対象とした抑肝散の無作為化比較試験(RCT)の最新メタ解析を実施。

【方法】主要評価項目は有効性にBPSD総スコア、安全性は全中止脱落症例数である。副次評価項目はBPSDサブスケール、認知機能(ミニメンタルステート検査)、日常生活動作(ADL)、副作用(AE)による中止、AEの発生率である。

【結果】5本のRCT試験に参加したBPSD患者381例を対象とした。対照群(プラセボ+通常診療(UC))と比較し、抑肝散ではBPSD総スコアの有意な減少が見られた(標準化した平均値の差(SMD)=-0.32、95%信頼区間(CI)=-0.53〜-0.11、p=0.003、I2=0%、N=5試験、n=361)。抑肝散はプラセボ+UCと比較し、BPSDのサブスケールスコアの減少に有効であった(妄想:SMD=-0.51、95%CI=-0.98〜-0.04、幻覚:SMD=-0.54、95%CI=-0.96〜-0.12、興奮/攻撃性:SMD=-0.37、95%CI=-0.60〜-0.15)。一方でアルツハイマー認知症患者に限定したBPSD総スコア及びサブスケールに対しては、抑肝散はプラセボ+UCと比較し有意差は見られなかった。UCと比較して、抑肝散はADLスコアを改善した(SMD=-0.32、95%CI=-0.62〜-0.01)。MMSEスコアにおいては、抑肝散とプラセボ+UC治療群間で違いが見られなかった。全中止脱落症例数、AEによる試験中止、AEの発生率においても両群間での違いはなかった。

【結論】我々の結果から抑肝散はBPSD治療に有益であり、忍容性が認められる一方で、アルツハイマー認知症患者のみに限定したBPSD総スコアおよびサブスケールに対しては有益性が見られないことが示唆された。

Impact Factor: 3.517 PMID: 27497482